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CiNii Articlesで学術誌を検索できるようにするにはどうすればいいのか

人文・社会科学系の研究者にとって、CiNii Articlesは日本語で書かれたたいていの論文が検索できる便利なツールである。しかし、いかにしてこの網羅的なデータベースが構築されているかについて、知っている人は多くないだろう。かく言う私もアーカイブやデータベースの構築メカニズムに関してはほとんど知らない。

今回、私は訳あって、CiNii Articlesで学術誌を検索できるようにするにはどうすればいいのかを調べることになった。そこで調べてわかったことを以下に記録しておく。

 

1 国会図書館の「雑誌記事索引データベース」によってCiNiiでの検索が可能になっている

まず、CiNii Articlesの収録データベースだが、これはサイトに一覧がある。

CiNii Articles - CiNii Articles について - 収録データベース一覧 - サポート - 学術コンテンツサービス - 国立情報学研究所

この中で、人文・社会科学系に主として関係するのは、国立国会図書館の「雑誌記事索引データベース」である。

国立国会図書館が収集する国内刊行の雑誌のうち、学術誌・大学紀要・専門誌を中心として、人文・社会/科学・技術/医学・薬学と、あらゆる分野の記事に関するデータを収録した国内最大の記事索引データベースです。

とのことである。したがって、人文・社会科学系の論文は、「刊行→国会図書館に寄贈→雑誌記事索引データベースに登録→CiNiiに登録」という流れになっているようである。

さて、この「雑誌記事索引データベース」であるが、採録の基準は次のようになっている。(http://www.ndl.go.jp/jp/data/sakuin/index.html#journal) 

以下に該当する雑誌を採録誌とする。
(1)学術雑誌(学術研究論文が掲載されている雑誌)
(2)専門誌(特定の分野・業界に関する情報・解説・紹介・評論・考察等を掲載している雑誌)
(3)(1)、(2)に該当しない機関誌(政党・労働組合非営利団体・各種協会等の団体が、自らの政策や活動内容、意見及び関連事項を掲載しているもの)
(4)一般総合誌(一般誌のうち、論壇誌等多彩な内容を取り扱い非限定的な読者を想定しているもの)

要するに、学術雑誌に掲載されている論文であれば基本的に再録することになっている。「雑誌記事索引データベース」に登録された論文・記事は、「国会図書館オンライン」から検索できるようになる。この情報をCiNiiが収集することで、CiNii Articlesのデータベースは網羅的になっている。

 

2 採録誌を追加したい

さて、ここまでであればなんということはない一般的な情報である。しかし私が直面していたのは、「ある雑誌の論文を検索したいのに、その雑誌の論文データが丸ごと欠落している」という事態であった。

具体的には、『社会学史研究』という雑誌である。その名の通り、日本社会学史学会が刊行している学術雑誌である(もちろん査読有り)。上記の採録基準からすれば、当然国会図書館雑誌記事索引データベースに入っているべき雑誌である。

まず考えられる可能性としては、雑誌を国会図書館に寄贈していなかったという可能性があった。しかし国会図書館にはきちんと所蔵されており、これに関しては何の問題もなかった。

 

原因がわからないため、国会図書館に問い合わせてみることにした。

採録誌に関する問い合わせは、以下のフォームから可能である。問い合わせ内容の選択肢の中に、「書誌データの訂正に関すること(雑誌記事索引)、採録誌に関すること」とある。

お問い合わせ | 国立国会図書館-National Diet Library

 

問い合わせてすぐに、「国立国会図書館 収集書誌部 逐次刊行物・特別資料課」というところからメールで返信が来た。曰く、

採録誌検討会は定期的に開催している

・当該雑誌の採録可否については、5月頃に通知する(問い合わせをしたのは3月初旬)

とのことだった。

これで『社会学史研究』もCiNiiで検索できるようになる……と思ったのも束の間、メールの最後にこんなことが書いてあった。

なお、採録誌とさせていただくことになった場合、繁忙状況に鑑み、
最近に発行された巻号からの採録開始とさせていただいております。
大変恐れ入りますが、ご了承いただきたくお願いいたします。

これは困った。最新号(2017年刊)からの採録開始ということでは、過去数十年分の論文の検索は結局できないままである。ひょっとすると私の方がこの文面の意味を誤解しているのかもしれない、と思い再度問い合わせてみたが、やはり「最新号とそれ以降に刊行された巻号のみを再録するという方針」とのことだった。

 

最終的に、この方針の通りの結果になった。『社会学史研究』は5月末に国会図書館採録誌に追加され、ほどなくCiNii Articlesでも2017年号の論文が検索可能になったが、2016年以前の論文は検索できないままとなった。

ウェブサイトに書かれている採録基準からすれば、「『社会学史研究』を追加した」のではなく「『社会学史研究』が採録誌から漏れていたのを修正した」というのが実情であるはずだ。にもかかわらず、「以前の巻号は再録しない」という方針のようである。納得いかない思いであるとともに、個人で働きかけてできることの限界を感じた。